具体的な離婚原因は、配偶者の異性関係、暴力的言動、浪費や借金問題、性格・価値観の不一致など様々な事情があります。
これらについて裁判で離婚が争われた場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かについて、言い換えると、婚姻関係は破綻しており修復不可能か否かについて、証拠によって証明された事実を元に判断されることになります。
これまでのコラムでも何度か述べた通り、1つの事情だけでは、確実に関係は破綻しており修復不可能だとは言い難い場合に、併せて考慮すべき事情の1つとしてよく挙げられるのが「別居期間」です。
別居期間が長いということは、別々の生活が現に継続し、共同生活の実態がもはや無いことから、元鞘に戻ることは現実的でなく、修復不可能であると言えるため、破綻事由の1つとして考えられるのです。
ここでよくあるご質問は、「どのくらいの別居期間があれば離婚できるか」というものです。
平成8年に民法改正の法律案要綱が提出された際(現在話題の、いわゆる債権法改正とは別です。)には、5年以上の別居を離婚原因に加えるという案もあったのですが、この案は成立しておらず、何年で離婚できるという明確な基準は無いのが現状です。
ただ、離婚原因となる別居期間というのは、婚姻期間(同居期間)の長さとの対比や別居に至る原因(双方の有責性の度合い)などを考慮して判断すると言われています。すなわち、長い間同居していた夫婦であれば、多少の別居期間があったとしても修復は可能であると判断され易いでしょうし、別居に至る原因が離婚請求される側にあるのであれば、別居期間は短くとも離婚原因として認めるべきと判断するといった具合です。
実際の裁判例でも、別居期間が2、3年で認められる例もあれば、認められない例もあるのです。
要は、単純な期間の問題でなく、別居の原因等の経緯も十分に考慮して判断する必要があるということです。
なお、離婚原因とは別の問題ですが、別居というのは、子供がいる場合や仕事をしている場合などには、生活環境が変化することによる様々な事実上の影響があります。また、別居後の生活費や生活基盤をどのように確保するかという問題もあります。別居をするには、どのようなデメリットがあるか、別居後にはどのように生活し、手続きを進めていくべきかということを十分にお考えいただく必要があると思います。
そのため、既に別居中で離婚の手続きを進めたいとお悩みの方はもちろん、離婚に向けてこれから別居することを考えているという方も、お気軽にご相談いただければと思います。